私は生まれて以来、同じ自治体に住み続けている。
大学も地元で通っており、実家を出ることはなかった。
このような経験を持つ私には、転勤にどうしても良い点が見いだせない。
転勤族家庭に育った高校生の悲哀
私が高校2年の時、クラスメイト(以下Aさん)が転校することになった。
Aさんにとって最も辛かったのは、慣れ親しんだ環境との別れではなかった。
「高校が変わると不利になる」と、しきりに言っていたのだ。
大学受験を控えた時期に、親の都合で高校が変わってしまう。
先生や友達とゼロから関係を築くのは大変であり、学校によって教科の進み具合も違うだろう。
「わざわざ転校しなくてもいいのでは」と、当時の私は思った。
親の転勤について行かずに一人暮らしを選ぶ生徒が、学年で数人ほどいたのでなおさらだ。
しかしAさんは一人暮らしを許されず、親について行くしかなかった。
別の話もある。
中学時代の友人(以下Bさん)から聞いた話だ。
Bさんの通う高校は、県下でも下から数えたほうが早い高校だった。
普通科はあるものの、大学進学を目指すなら選ばないという評価である。
この高校に、他県から転校生(以下Cさん)がやって来た。
Cさんは非常に優秀で、当然大学進学を予定していた。
転校する際に「どの高校が最もレベルが高いですか?」と問い合わせたところ、候補を2つ紹介されたそうだ。
1つは県下1位の進学校、もう1つはBさんの通う高校だ。
この条件でCさんが選んだのは、Bさんの通う高校。
成績は良いが県下1位の進学校には転校できない、編入試験を受けても不合格だろうという予測のもと、安全策を取ったそうだ。
もしもCさんが親の転勤に見舞われなかったら、もっとレベルの高い大学へ進学できたのかもしれない。
夫が転勤族で苦労しているママの話
娘が幼稚園に入園した時、私はPTA役員を引き受けた。
その席で1人のママ(以下Dさん)と知り合いになり、転勤族の大変さを聞く機会があった。
Dさんのご主人は転勤族で、3年ほどで全国規模の異動を繰り返していた。
そして、転勤が決まる度に発生する引っ越しが辛いと、Dさんは言うのだ。
人間関係を再度、構築しなければならないこと。
生活スタイルもリセットされるので、日々の買い物から考え直さなければならないこと。
内気なDさんが非常にストレスを抱えていたことは、話を聞くだけで想像できた。
「もしも夫が転勤族ではなかったら」
このフレーズがDさんの心に浮かんだことは、きっとあるだろう。
転勤の意義はあるのか?
転勤は過去の遺物だと、私は考えている。
江戸時代の参勤交代と同じ流れを汲んでいるように見えるのだ。
冒頭にある通り、生まれ育った土地から一度も離れないままここまで来た。
そして、何の不便も感じていない。
今は令和。江戸時代はもう終わりにしてもいいのではと思っている。
