職務経歴書の良し悪しは、転職の成功に影響しない

昨今は新卒で入社した会社に骨を埋める人が、すっかり少数派になってしまった。
かくいう私も、新卒で入社した会社は6年で退職しているし、つい先日も、娘が新卒で入社した会社を2年と少しで辞め、今月から新たな職場で働き始めたばかりだ。

さて、転職活動につきものなのが職務経歴書だということに異論を挟む人は、おそらくいないだろう。
だが、あなたは知っているだろうか。
従業員が100人未満の中小企業においては、職務経歴書が重視されるとは限らない、という現実を。

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採用の現場では、何が起きているのか?

過去、私は従業員数100名未満の企業を顧客として、事業を展開していた。
事業内容は、いわゆる事務代行である。
外部の専門家として、多数の企業から人材にまつわる悩みや苦労話を聞いてきたわけだ。

そして、中小企業の経営者が人材に持つ苦悩は、私自身の抱える問題でもあった。
代行業である以上、ある程度のスキルを持つ人員を一定数、常に確保せねばならなかったからである。

なので、私自身が採用の最前線に立つことになるのだが、その際、職務経歴書など一切見ていなかったのだ。
正確に言うと「職務経歴書を見るくらいなら、いきなり本人と話をした方が確実だ」と判断していた、となる。

この判断に至った理由は、職務経歴書が今ひとつでも人柄が素晴らしいというケースに、多数出会ってきたから。
また、職務経歴書が素晴らしいからと本人に面談したものの、期待外れでがっかりした経験も持っているから、でもある。

大企業であれば、職務経歴書をもとにいわゆる「リファレンスチェック」をする方法も取れるだろう。
だが、私を含む中小企業は、そんな体力など持ち合わせていない。
それであれば、「職務経歴書はほんの参考程度にして、本人にまずは会ってみよう」という選択をする経営者や人事担当がいても、何ら不思議ではない。
少なくとも、ここにひとり、存在している。

さらに、従業員数が少ないがゆえに、採用の失敗は即、会社全体に大きな影響を与える。

過去にこのような経験はないだろうか。

あなたの勤務する会社で、中途採用の新たな仲間を迎えた。
前職では非常に優秀だったそうで、実際、今もその能力をいかんなく発揮している。
だが、「一緒に仕事をしたい人柄か」と尋ねられると、お茶を濁さざるを得ない。
1ヶ月もしないうちに部署全体の雰囲気が悪くなり、退職を考える社員まで現れ始めてしまった。

中小企業の経営者や採用担当が最も恐れる事態のひとつは、実はこれである。
つまり、「優秀だから」と自社に合わない人材を採用すると、一気に会社全体が崩壊する危険性すらあるのだ。

結果、表面的な職務経歴書やリファレンスチェックは参考に留め、面談担当者の判断を重視する。
これが採用の現場で起きていることである。

25年前に体験した、中小企業特有の人事にまつわる大問題

さて、ここからは25年前の私の体験を話そう。

25年前、私は結婚した。
相手は同じ会社の同じ部署で働いていた、同僚だ。

当時の私の勤務先は従業員数20名程度のユーザー系SIer、いわゆるソフトウェアハウスだ。
人数が少ないので部署も細かく分かれておらず、「営業」「開発」「マニュアル、データ入力専門」「総務・経理」と、この程度だ。

私は開発担当のSE、そして夫も開発担当のSE。
何が起きたか、あなたにはお分かりだろうか。

おそらく、会社側としては私たちが結婚した時点で、どちらかの部署を異動させたかっただろう。
だが、担当業務が同じであるばかりか、担当していた顧客の大部分も同じ。
その上、席も隣同士であったのだ。

「どちらかを異動させて顧客に迷惑をかけたり、社内を混乱させるよりは」と、会社は判断したのだろう。
どちらも部署異動することなく、席も隣同士のまま。
ただ、同じ名字の社員が2名、隣に座っていると業務に差し障りがあるので、私は退職する日まで通称として旧姓で呼ばれ続けたのだ。

こうして、25年前の話にもかかわらず、期せずして時代を先取りする形になった。
しかし、当人である私を始めとして、関係するすべての人に不便を強いる羽目になってしまった。

以上が、中小企業における人事の本質的な課題であると、私は確信している。

職務経歴書よりも大切なこと

中小企業における採用活動においては、求職者の提出する職務経歴書が読まれることなく面談に進むこともある。
目を通したとしても、職務経歴書の内容が採用の合否に影響する可能性はそれほど高くない。

また、大企業のようなリファレンスチェックを行うための人的リソースに乏しい。
この実態もまた、求職者を面談することによる人物本位の採用活動に拍車をかけている。

さらに、社内の人数が少ないがゆえに、新たに迎え入れる社員の人柄にはあなたが思う以上に最新の注意を払っているものだ。
職務経歴書を見る限りでは能力面で問題がなかろうと、「経理のAさんと反りが合わなさそうだから」という些細な理由で不採用を平気で出すのだ。

中小企業の採用担当が、最も重視すること。
それは「つつがなく、会社が回ること」である。

どんなに優秀な求職者が応募してきたとしても、会社に波風を立てる可能性を少しでも感じたら、その人を採用してはならない。
これが経営者から託された至上命令なのだ。

だから、こう言えるのだ。
「職務経歴書の良し悪しは、転職の成功を左右する最重要項目ではない」

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この記事を書いた人

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