「分からないことがあった時は、AIに質問すると良い」
この言葉を耳にした経験は、多くの人にあるのではないだろうか。
AIに質問すると、それらしい回答が得られる時もある。
実際に役に立つケースもあったはずだ。
だが、正しそうな回答だからといってすぐ採用できるのか、という疑念を持った出来事があった。
パソコンが起動しない朝
先日、朝7時にセミナーに参加しようとしたが、寝坊してしまった。
開始時間が迫る中、あわててパソコンの電源をつけたところ、このようなエラーが表示された。
「User Profile Service サービスによるサインインの処理に失敗しました。
ユーザープロファイルを読み込めません。」
Windowsにログインできず、Zoomに接続することもできない。
焦った私が選んだ行動は、スマホからGeminiを立ち上げて助けを求めることだった。
AIからの回答
AIからの回答は、私にとって驚くべきものだった。
「Windowsで『User Profile Service サービスによるサインインの処理に失敗しました。ユーザープロファイルを読み込めません。』というエラーが発生した場合、ユーザープロファイル(設定や個人データが保存されている領域)が破損していることが原因です。
現在PCにログインできない状態であるため、セーフモードまたは回復環境(WinRE)に移行して修復作業を行う必要があります。最も安全で一般的な、セーフモードからレジストリを修正する手順を案内します。」
この回答を読んだ私が感じたのは、「素人が実行できる手順ではない、これは採用できない」である。
仕事でパソコンを使い始めてから、30年が過ぎた。
セーフモードを起動すること、レジストリを修正することの危険性は認識している。
ただし、これはたまたまそうだっただけであり、特殊なケースだ。
だがAIは何の注意喚起もすることなく「最も安全で一般的な」と言い出したのだ。
本来ならば、レジストリ編集の前にできることがある。
パソコンを再起動する、放電を試みる、などだ。
しかし、パソコンの知識が少ない人はレジストリに関する知識に乏しいだろう。
「AIが安全で一般的だと教えてくれたから」と、言われるがままに操作するかもしれない。
そう思うとゾッとした。
最終的には、パソコンは無事復旧した。
セーフモードでの起動、レジストリの編集は不要だった。
現在、原因は判明している。
とはいえ、AIで行うトラブルシューティングに対する気持ち悪さが消える日は、来ないだろう。
今もなお、「Geminiは信用できない」という感覚が私の中にある。
ここから得られたことは、2つある。
1つはAIからの回答にはユーザーの現状が考慮されていないこと。
そしてもう1つは、回答を鵜呑みにすることに対する強い懸念だ。
AIの回答には「誰が」責任を持つのか
AIはツールに過ぎず、出力結果に対する責任は操作する人間に委ねられていると私は考えている。
もしもAIの言うことが理解できない場合は、自分が分かるまで説明を求めた上でどうするか決めるべきだとも思っている。
今回のような「レジストリ操作は慎重にするべき」という知識を持っていない人は、危険だと思わずに操作するかもしれない。
その結果パソコンが復旧不能になったら、一体誰が責任を取るのだろうか。
万人が納得できる回答は、今は存在していない。
制度面の整備が追いつくのはまだ先ではなかろうかと、予想している。
